ホテルの偽装問題の本質はなにか


やたらめったら騒がれている状況ですが、
この問題の本質は、
「偽装を、現物を食べた消費者が判定できない」というところにあります。


どういうことか。
たとえば、「黒毛和牛」ステーキとして出てきた、焼いた肉について、
実際に食べてみて、黒毛和牛かどうかがわかりますか?


そもそもあなたは本当に、黒毛和牛の味を知っているのか、と。


黒毛和牛だ、といわれて、違うとわからない肉は、
消費者には本物の黒毛和牛と変わらない便益を生んでいるわけです。
同じ便益に対しては同じ対価が支払われるべきなのは、
経済の原則上、当然の話です。


いやいやそんなことはないぞ、と。
偽物と知っていたらそんな満足が得られるわけないじゃないか、と。
少なくとも本物と同じ金なんか払わない、と。


消費者は、黒毛和牛の味や栄養、歯ざわりなどにお金を払っているわけではないらしいです。


消費者は、「黒毛和牛を食べた」という事実に金を払っているわけです。


だから、偽装についてあんなに憤るわけです。


しかし、裏を返せば、バレなければ、消費者はなにも損をしません。


ということは、
本物と偽物の原価に大きな差がある場合、
偽装がバレた場合の提供側の対応として合理的に、


・もっとバレないようにする
・バレたら穏便に済ませ、早く世間には忘れてもらう
・トップ首切りなど禊によって「この件は解決済み」との印象を世間に与える


ということになりえる可能性があります。


まっとうな対応策と思われる、


・本物を使う


という手段をとり得るかどうかは、
論理的には、バレる確率を元にした、期待利益がどっちが高いかで決まります。


ただ、上位の面々の指示が適当だと、この論理的帰結と異なる結果は容易に起こります。


例:「本物を使え、でも原価はこれだけ下げろ」という指示を出した場合のありがちな帰結
・上層にバレないように偽物を使う
・「そんなの無理難題ってわかりますよね」と上司を丸め込む
・まともな社員から辞めてモラルの低い社員だけが残る


これだと、本来は本物を使ったほうが期待利益が高いはずでも、現場でそれが覆されます。



それは結局、現場で肉を見たり食ったりしても、だれも本物かどうかわからんからです。



ただ、今業界として起こっているのは、
「同業からも同種の発表をたてつづけに行うことで、「本物の便益」を貶めることで、
 偽物とバレた場合のリスクを減少させる」
という状況です。


ここまで書いたところで、類似の指摘を見かけた。


http://ameblo.jp/sinobi/entry-11680115673.html


>メニューを食べていると言ってもいいかも知れない。


言い得て妙だなぁ。


ただ、


>しかし「有機栽培」という文字を美味いと感じている人間には、違いなど分からない。
>消費者である私達が賢くなるしかないのだ。


多くのケースとしては、文句と責任の振り先が求められていて、
マスコミと業界がスケープゴートをでっち上げて、
それで満足した気になっておしまいだと思うな。


だって、
賢くなるのって大変だし、
賢くなる訓練をしてこなかった人がいま大人として社会にいっぱいいるんだし。






※注意事項

予め書いておきますが、上記に該当しないケースはあります。
添加物によるアレルギーの問題です。
成形肉を作成する際に用いられるつなぎの材料(小麦粉とかとうもろこしとかそういうの)で
アレルギー反応の出る人にとっては切実な問題です。


ただ、このアレルギー問題と「本物のあじなんかわからん」問題に
どのような連続性、不連続性があるのか、は、
今後考えこんでいかないとわからないと思います。