Windows Defenderで骨抜きにされるアンチウィルスソフト


Windows Defenderは、アンチウィルスソフトメーカを壊滅させる潜在力があるという話。


Windows Vistaがとりあえず(企業向けには)リリースされた。
したがって、その概要は、一応一般の人も触れられる状態になった。


これもまた仕事柄、Vistaにβ版から触れる機会は多かったのだが、
その仕様の中でとくに気になる部分を。


Windows Defenderという、微妙なツールがある。
なにがどう微妙かというと、アンチウィルスソフトかどうかのところだ。
マイクロソフトがアンチウィルスソフトを提供してしまうと独占禁止法に抵触する恐れがある。
Windows Defenderは、それをギリギリのところまでで寸止めするとともに、
アンチウィルスソフト市場の崩壊をもくろんでいるという非常に野心的な機能だ。


まず、現在パソコンに被害をもたらすといわれている外敵は、大きく以下のものがある。
・ウィルス
・ワーム
スパムメール
・フィッシングサイト
・ポートアタックやDDoSなど
もちろん、複合化したものやこれらでのカテゴライズができないが有害なものもある。


そして、対策にも以下のものがある。
・予防
・発見
・駆除


マイクロソフトがしたたかなことの1つは、上記のように脅威を細分化し、
アンチウィルスソフト会社の持つ市場にぎりぎりまで近づいていったことにある。


表にすると、こうなる。


Windows Defenderがやること。

- 予防 発見 駆除
ウィルス ×
ワーム ×
スパムメール
フィッシングサイト
ポートアタックほか


スパムメールとフィッシングサイトの対策は、IEならびにWindows Mailに統合されているため、
これはアンチウィルスソフトの市場を妨害しないという見解を持ち得る。
(自社プロダクトの改良だ、ということになるから)


さて、マイクロソフトがえぐいのは、
ウィルスやワームの「発見」はするが「駆除」はしない、というところにある。
駆除はアンチウィルスソフトの仕事ですよ、だからうちは見つけて警告を出すだけですよ、
(だからアンチウィルスソフトメーカの市場をOSの支配力で駆逐しようとしているわけではないですよ)
ということだ。


しかし、ウィルスの発見にこそアンチウィルスのノウハウの大半が含まれているのだとしたら、
そしてWindows Defenderが、発見したウィルスの詳細情報を、
他のプログラムに引き渡すことが出来るのだとしたら、
APIの実装とかで。おそらくデジタル署名されたタスクにしか引き渡さない形で。)
他業種からの参入や、技術レベルが低いソフト会社による、
安価で「駆除専門」のアンチウィルスソフトがおそらく出現するだろう。


MSの技術で発見したウィルスを、速やかに駆除します。


これはやばい。
シマンテックトレンドマイクロも、会社の屋台骨が揺るぐ恐ろしい状況だ。


しかも、この状況に対し、トレンドマイクロシマンテックがナリを潜めているのがまた怪しい。
これもマイクロソフトの戦略がしたたかすぎるからか。
両社がいたずらにこのことで騒いでしまうと、
Windows Vistaが標準でウィルス「発見」機能を持っていることを、
両社が宣伝してしまうことになる。
それを見越して、マイクロソフトは自社では一般向けには大きく取り上げないのだろう。


マイクロソフトWindows Defenderを無償で配るわけなので宣伝する意味がない。
MSのDefender提供の目的は、ユーザーの脅威を減らすことによるサポートと訴訟コストの圧縮だ。


さて、シマンテックトレンドマイクロは、今後どうやって生きていくか。

  1. 多角化に乗り出す
  2. 会社規模を縮小してウィルス駆除に特化する
  3. 廃業
  4. マイクロソフトでも対応できない脅威に対応できるよう製品に磨きをかける
  5. 脅威を自ら「作り出す」
  6. なんとかしてマイクロソフトを訴えてDefenderの機能も独禁法違反にしてしまう。


さあ、どうなることやら。