ブロッコリーが店舗業務をアニメイトに譲渡


店舗業務が不振だ、と言うだけでは、状況はみえてこない。
いくつかの視点が必要だ。

発表資料には、ブロッコリー自身が捉えている業界の勢力地図などもあるため、
話がしやすい。


いわゆる「アニメショップ」の勢力地図、というものを考えてみると、
(上記の発表時の資料にその図が入っている)


「リーダー」「フォロワー」「ニッチャー」の分析は、非常にわかりやすい図式だ。
問題は、「なぜフォロワーはリーダーを目指せないか」だ。


そもそも、リーダーはだれ?という問題がある。


アニメイト:400億円(2008年)
ゲーマーズ:260億円(2010年)
とらのあな:180億円(2008年)
メロンブックス:80億円(2009年)
まんだらけ:70億円
メッセサンオー:ちょっとググった程度では見つからなかった
ホワイトキャンパス:不明


アニメイトより上となると、アニメショップではなくなるかと思うが...


TSUTAYA:887億円(2010年)(単独)
GEO:106億円(2010年)(単独。連結だと2,000億円以上、というのが謎。)



ここから見えるのは、
ゲーマーズのリテール事業ってそんなに困った状態なの?
ということ。


たしかに、2010年度は、営業損益でいえば赤字が出ている。
しかしそれは、なぜ赤字が出ているのか、という原因と関連して
考えなければならない。


なにかスポットの原因がない限りは、赤字の原因は、大きく下記の2通りと考えられる。


・原価の高騰もしくは安売りによる利益低減
販管費の高騰


じゃあ、ゲーマーズで扱っているような商品が、
店舗でやたら安売りしているような状況があるか?といわれれば、
そうではないように思える。
書籍や映像、音楽作品は、そんなに利益率が低いわけではないだろう。おそらく。


では卸価格が上昇しているのだろうか?ここは不明なところだ。


次に販管費だが、
店舗運営そのものの費用であれば、人件費と光熱費、そして賃借費用になる。
これに通常は販促費用を加えることになるだろう。
変動が大きいと思えるのは販促費用だが、
使い過ぎたのなら抑えればいいので、直ちに事業譲渡、というふうにはならない。


じゃあ、スポット要因があるのか?


実は、スポットというものではないが、
ひとつ目星をつけている内容がある。


それは、
「アニメ・ゲーム関連グッズの購入層が女性にシフトしている」
ということだ。


もっというと、
これまでマスメディアと連携してグッズを販売してきた手法が、
男性には通用しなくなってきた、ということだ。
そして、その背景を、同人市場の成長に見ている。
同人市場は、男性オタク市場で大きな地位を占めるようになり、
ゲーマーズから同人ショップに人が流れた、という仮説だ。


たしかに個々の同人ショップは、いずれもゲーマーズの売上より低い。
しかし、とらとメロンの合計で、ゲーマーズと同程度。
他のショップを含めると、ゲーマーズを上回る。
とはいえ、アニメイト規模までいくかは不明だ。


しかし裏をかえせば、それだけの市場が、同人ショップに取られてしまった、と
言うことかもしれない。
これは年次の推移がないと分析できないことだが。


さて仮に、同人市場が男性向けアニメ関連市場を食っていったとすると、
どういう対策が選択肢として考えられるか。


1)女性向け市場を強化
2)同人市場を強化


この選択で、より店舗経営を安定させるためには、1)を選択したと思われる。


とくに、アニメイトは女性向けが強いアニメショップだ。
それが、自らを上回る売上を上げている、という点で、
冷静に分析すれば、市場規模はそちらこそ有効、と考えたのだろう。
また、マスメディアコンテンツとの連携、という資産も、女性向け市場なら
引き続き有効に使えるが、同人ショップ運営はノウハウが少なく、後発の不利もある。


加えて、マスメディアコンテンツ制作側と仲良くするには、
ある程度同人市場とは距離を置く必要があるのだろう。


加えて、
店名の冠になっていた、ゲーム関連市場は、もはや風前の灯といえる。
会社自身も、ゲームの啓蒙を行う使命感はなく、
また、日本のゲームそのものが世界的に見ても死に体であることから、
店名の看板を掲げ続けることのメリットがなくなったのだろう。


アニメに限らず、コンテンツ産業で、関連商品の購買層は、
女性が大きな力を持っている、というのは近年の特徴のようだ。
いえろ〜ぜぶらも、製作者コメントで、お笑い産業について、
同様の発言を行っている。


さて、ゲーマーズが店舗事業を譲渡すると、
残るのはコンテンツ制作事業になりそうだが、
会社規模は大幅縮小になる。

そこからの成長をどう見ているのだろうか。
いまからスマホアプリに行っても遅いような気がするのだが。




追記:

同人市場の大部分は成人男子向け:
http://d.hatena.ne.jp/sirouto2/20090831/p1

商業作品を同人作品が食っている可能性はある。
あとは、社会的地位の問題。